熱中症と頭痛――その危険なサインに気付いていますか?

暑い日に頭がズキズキ痛むことはありませんか?
「寝不足かな」「冷たいものを飲みすぎたかも」と思って放置していませんか?
その頭痛、命にかかわる危険なサインかもしれません。
年々暑さが増す日本の夏。私たちの体は暑さと闘いながら日常を送っていますが、見逃してはいけないのが「熱中症のサイン」です。特に、「頭痛」は軽視しがちな症状ですが、実は命に関わる危険なシグナルでもあるのです。
熱中症は『段階的に進行する』
熱中症とは、高温多湿な環境下で、発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。屋外だけではなく、室内で何もしていないときでも発症する可能性があります。
最初はめまいや立ちくらみ、筋肉のこむらがえり等の軽い症状が現れる「重症度Ⅰ度(軽症)」と呼ばれる段階ですが、これが進行すると吐き気や強いだるさ、ガンガン・ズキンズキンとするような頭痛が現れます。これを「重症度Ⅱ度(中等症)」と呼び、意識がぼんやりするなどの意識障害がある場合には、病院への搬送を必要とします。さらに重症化すると、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたりすることもあります。これを「重症度Ⅲ度(重症)」と呼び、救急車を要請し、到着までの間は積極的に体を冷却するなどの対応が必要となります。



引用:環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
熱中症による頭痛は『危険なサイン』
人の体は暑さで体温が上がると、皮膚の血管を広げたり、汗をかいたりして、体の表面から熱を空気中に逃がそうとします。
血液は熱を運ぶ役割があり、皮下の血管を開いたり閉じたりすることで、外気と接している皮膚から熱の放散量を調節しています。暑い時に皮膚が赤く見えるのは、皮下の血管を開いてさかんに熱を放散しようとするためです。
しかし、暑い環境下では皮膚の血管を広げて熱を空気中に逃がそうとしても、外気の温度が高いために熱を逃すことが難しくなるため、主に『発汗』による気化熱で体温を下げようとします。

屋外の炎天下の作業時だけではなく、冷房等が十分ではない暑い室内で何もしていない状態であっても、暑さによって体温が上がれば、体温を下げようと体は大量に汗をかきます。そして、水分や塩分が汗となって流れ出ると、体内では水分や塩分が不足し、血液の流れが悪くなり、めまい、立ちくらみ等の熱中症の初期症状が現れることがあります。
この状態を放置すると、脳や消化管、肝臓等の重要臓器への血流低下や、それら臓器自体の温度上昇により、全身のだるさや頭痛、吐き気といった症状が現れます。
つまり、頭痛や吐き気などが現れたらすでに症状が進行している危険なサインなのです。
熱中症かなと思ったら~現場の応急処置~
①まずは涼しい場所へ避難を
日陰や冷房が効いた室内等に避難しましょう。
もし、熱中症が疑われる方が自力で避難することが難しい場合は、周りの人が力を貸して避難させましょう。

②脱衣と冷却
【重症度Ⅰ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)の場合】
衣服を緩め、水分と塩分を補給しましょう。
さらに、冷やしたり凍らせた飲料のペットボトルやビニール袋入りのかち割氷等をタオルでくるんでおき、首筋(首の付け根)の両わき、脇の下、足のつけね(鼠径部)に当てて、皮膚直下を流れている血液を冷やすと効果的です。
また、皮膚を濡らしてうちわや扇風機で扇いでも冷却効果があります。
※最初から症状が強い場合や、吐き気などで水分補給ができない場合、処置をしても症状がよくならない場合には、すぐに救急車を要請しましょう。

【意識障害がある、または重症度Ⅲ度(重症)の場合】
呼びかけに応じない、意識がぼんやりしている等の意識障害がある場合や重症度Ⅲ度(重症)を疑う症状の場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
救急車が到着する間も、上記のように冷却を行なうことが必要です。
「たかが頭痛」ではなく「頭痛は危険なサイン」です。
無理をせず、早めに体からのサインに気付いて、命を守る行動を取りましょう。
・厚生労働省 『熱中症予防のための情報・資料サイト』
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/・日本気象協会『熱中症ゼロへ』
https://www.netsuzero.jp/learning/le01/case03-01(薬剤師)