高血圧を放置してはいけない理由
私の年齢が50歳を超えた頃から、周りでは「血圧が高くなった」と嘆く人が増えてきました。血管も年と共に老化するので、この頃から高血圧の人が増えるのは当然といえば当然です。でも、気がかりなのは、降圧剤を服用しておけば大丈夫と思っている方が多いように感じることです。本当に薬をのめばそれだけでよいのでしょうか?
老化した血管は弾力を失い血流が悪化し、血液の運搬能力が低下してしまいます。このため全身の細胞に酸素や栄養が運ばれにくくなり、細胞の酸素や栄養不足を招きます。すると、細胞の集団である臓器で様々な不調や病気が起こりやすくなります。このような状態をなんとか回避しようとして、血圧を上げる仕組みが働いた結果が高血圧です。
血圧が高い状態が続くと、血管をサビさせる活性酸素が大量に発生しやすくなります。多量の活性酸素の発生は血管の炎症をひきおこすために、血管は脆(もろ)く壊れやすくなり、動脈硬化が始まります。また、悪い影響は血管だけでなく血液成分にも及びます。血液成分の大部分を占めるのは赤血球ですが、この赤血球の膜もサビてしまいます。赤血球膜がサビると、赤血球は変形ができにくくなるので毛細血管を通過しにくくなり、血流は悪いままです。
さて、「血圧が高くなったら降圧剤を飲めばそれだけでよいのか」という疑問です。降圧剤で血圧は下がり、血管に余計な圧力がかかりにくくなりますが、既に老化した血管が若返るわけでも、酸化した赤血球膜が元に戻るわけでもありません。また、降圧剤で血流がよくなるわけではありません。一方、血流が悪いままだと血液は固まりやすくなり、脳卒中や心臓病などが心配です。
適度な運動や規則正しい生活をして、また、普段から血流を良くしましょう。
(薬剤師)