「たかが花粉症」なんて言えない!? 賢く症状を予防しよう!

<あなどれない! 花粉症がもたらす大きな“損失”>
かきむしりたくなるほどの目のかゆみや、止まらないくしゃみと鼻水、そしてひどい場合には熱っぽさまで……これらは、私が花粉症デビューをした社会人1年目の頃に体験したツラい花粉症の症状です。
梅の開花がニュースで流れるようになり、『春の足音』に心躍る一方で、また今年も花粉症の時期がやってくると思うと憂うつになる方も少なくないのではないでしょうか。
実は、日本の花粉症の経済的影響は医療費だけではなく、仕事等の能率低下による間接的な費用損失も大きいと言われ、心臓疾患、ぜんそく、糖尿病などの病気よりも高額であるという報告もあります1)。
しかも、花粉症患者は年々増加傾向にあり、花粉症の中でもスギ、ヒノキの花粉を原因とするものが最も多いとされています。スギやヒノキの花粉が飛散し始める春先になると、天気予報では花粉の飛散状況が取り上げられたり、テレビやインターネット等の広告に花粉症の薬(抗アレルギー薬)が多く見られるようになります。余談ですが、約3人に1人がスギ花粉症なんだそうです。例にもれず筆者もそのうちの一人ですが、スギの雄花を見ただけで鼻がムズムズしたり痒くなってしまいそうになります。

スギの雄花(スギは雄花から花粉を放出する)
<のどの痛みや睡眠不足まで!? 意外な花粉症の症状も>
花粉症の4大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみと言われています。花粉症と聞くと、この4つの症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はこれだけではないのです。
咳(せき)、痰、のどの痛みや皮膚のかゆみ、頭痛、熱感(熱っぽさ)なども、花粉症によって起こりうる症状と言われています2)。多くの症状が風邪の症状と似ているので、勘違いしてしまいそうですよね。私が初めて花粉症デビューした時には、まさかこれらの症状が花粉によるものだとは、思いもよりませんでした。体にとって花粉は『異物』なので、それが顔などの皮膚に当たれば痒くなったり、鼻づまりなどで口呼吸になれば、のどや気道、副鼻腔の粘膜に花粉が付着してしまい、花粉(異物)を取り除こうと咳が出たりします。

鼻づまりなどの花粉症の症状が重症化すると、睡眠不足に陥りやすくなります。それによって日中の眠気や集中力の低下、イライラ感など1)、日常生活にも悪影響を及ぼし、QOL(生活の質)が大きく損なわれてしまうことがあります。
花粉症を重症化させず、つらい花粉症の症状に悩まされないようにするには、どうしたら良いでしょう?
<花粉症対策のポイントは『花粉を入れないこと』>
花粉症は、体内に入った『花粉』を体が異物として認識することで起こるアレルギー反応です。そのため“花粉をできるだけ体内に入れないこと”が、花粉症対策で最も重要とされています。次のようなことに注意をすれば、花粉が体内に入る可能性を格段に下げることができます1)。
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①花粉のシーズンでは、テレビやインターネットニュースなどで花粉飛散情報をチェックしましょう。特に花粉の飛散量が多い日は外出を控えることも、有効な花粉症対策の一つです。
まずは、ご自身が住んでいる地域の花粉飛散時期を確認しましょう。
例えばスギ花粉は、例年2月上旬頃から九州、四国、中国、東海、関東甲信の一部で飛散し始め、近畿、北陸、東北南部は2月中旬から下旬、東北北部は3月上旬から中旬頃に飛散し始めます。さらに、花粉が飛びやすくなる日の条件3)も知っておくと良いでしょう。
(1)晴れて、気温が高い日
(2)空気が乾燥して、風が強い日
(3)雨上がりの翌日これらの日には外出を控えるなど、特に注意して過ごしましょう。
なお、スギ花粉の生産量は花粉が形成される前年夏の気象条件に大きく影響されると言われています。日射量が多く、降水量が少ないほど、翌春の花粉生産量が多くなる傾向があることがわかっています4)。
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②マスクは花粉のシーズンには必需品と言えます。マスクを正しく装着すれば、吸い込む花粉の量を1/3~1/6に減らすと言われています。さらに、花粉症になることを防ぐ効果も期待されています。
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③眼鏡をかけると、裸眼の場合に比べて目に入る花粉量を約40%削減できます。また、花粉の侵入を防止することに特化した『花粉防止メガネ』をかけると、目に入る花粉量を約65%削減できるとされています。さらに、帰宅後には人口涙液の目薬などで目を洗うことも効果的です。
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④外出時は、花粉が直接からだに付着しないように、肌の露出が少ない服装を選びましょう。化学繊維は静電気を生じやすく花粉が衣類に付着しやすいため、静電気防止スプレーをあらかじめ衣類に噴霧しておくことも一つの手です。
帰宅したら、玄関で衣類や髪をよく払ってから入室し、うがい、手洗い、洗顔を習慣付けましょう。さらに、玄関先に粘着クリーナー(コロコロテープ)を置いておき、外から帰ってきた際に服全体をコロコロすると、家の中に持ち込まれる花粉の量が減らせます。花粉を『家に』入れないことも大切です。
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⑤花粉の飛散量が多い日は窓を閉め、洗濯物や布団を外に干すのは避けましょう。また部屋の掃除をこまめに行ない、さらに空気清浄機を活用すると、家に持ち込んでしまった花粉の除去に効果的と言われています。
いかがでしょうか。いきなりこれらの対策を全てやろうとするのではなく、まずはできることから始めてみることが継続の秘訣です。
少しでも、花粉症にお困りの方の参考になれば幸いです。
(薬剤師)