今も昔も人気です 松葉の力
松は常緑樹で葉を青々と茂らせていることから、古くから中国や日本では縁起の良い、また長寿の象徴として民間信仰の対象とされてきています。
松の話は、古くは中国の仙人の伝奇「列仙伝」にでてくるようです。仙人は霞(カスミ)を食べて生きていたと伝わっていますが、この伝奇では「松」を食べていたとあるようです。身のこなしの軽さや不老不死のイメージの仙人ですが、秘訣は「松」だったのですね。
また、戦国時代の武将たちは籠城が長引いて食料が無くなると、松葉を食べて生き延びたことが知られています(松葉ではなく、赤松から剥ぎ取られた柔らかい内皮という説もあります)。日本庭園には必需品の松ですが、庭園に美しさを与えるだけではなく、食料としての役割もあったとは驚きですね。
戦時中では、橋本敬三というお医者様が壊血病に苦しむ兵隊に松葉を煮だした汁を飲ませて治療したことが知られています。壊血病はビタミンCが不足で起こる病気で、歯茎からの出血や皮膚症状が現れ、死に至ることがある恐ろしい病気です。また、肺が侵される病気の結核では、その養生場所であるサナトリウムの周囲には松林がありました。
現代の生活でも松は馴染み深く、例えば、お正月の門松の飾りに使われています。山で暮らす人たちには知られていることですが、坂道を上るときは松の葉を口に含み、かみしめながら歩くと息が切れないといわれています。また、松葉酒づくりは昔から民間療法として盛んでした。
松は古来より、また今でも、私たちの生活や健康維持に役立っているのですね。