葛根湯でウイルス性のかぜ症候群に打ち勝とう!
風邪の原因の8~9割はウイルスによるものです。なかでもインフルエンザは高熱や強い倦怠感、節々の痛みなど重い症状が出るのが特徴です。インフルエンザに罹ったら医療機関を受診し、抗インフルエンザ薬を処方してもらうのが一般的です。
抗インフルエンザ薬は、タミフルやアビガン(新型コロナウイルス薬として臨床試験中)などで、ウイルスが人間の体内で増殖するのを邪魔します。一方、普通の風邪薬は、発熱、咳、鼻水などの症状を抑えるための薬の成分が配合されていて、ウイルスに直接に働きかけるものではありません。
さて、漢方薬はどんな働きがあるのでしょう。
漢方薬には、普通の風邪薬のような症状を抑える薬の成分は入っていません。でも漢方薬で風邪の症状は抑えられます。では、漢方薬はどのように風邪の症状を抑えるのでしょう?
風邪の初期症状である発熱、咳、鼻水はいずれもウイルスを追い出そうとする生体の防御反応です。漢方薬はこの生体防御反応を上手に利用することでウイルスを排除します。つまり、風邪の初期に使われる漢方薬は、ウイルスが熱に弱い性質を利用し、体を温めて発熱をうながし、ウイルスを排除しやすくします。この漢方薬には、「葛根湯」、麻黄湯、麻黄附子細辛湯、大青龍湯などがあります。どれを飲むかは、その人の抵抗力や体力などに合わせて選ばれます。
葛根湯は「体力中等度」の方がお使いになる漢方薬です。「熱が出そうだな、でも、まだ汗は出ていないな」というとき、つまり、風邪の初期の初期に飲むのが良いのです。なぜ、そんなに早い時期がよいのでしょうか?これはウイルスの増殖速度から考えるとよく分かります。1個のウイルスが体内に入ってきたときに、8時間後には100個に増えるといわれています。では、24時間後はどれくらいでしょう?
答えは、100万個だそうです。急激に増えてしまうから、「とにかく早く飲むことが効かせるためのポイント」になるのです。早く飲めば、戦うウイルスの数が少ないので、体に備わっている生体防御反応や免疫力でウイルスを排除することが可能になります。
ところで「何日くらいのめばよいのか」という疑問があります。風邪の症状が消えれば、それ以上飲む必要はありません。1日分、あるいは、1回分の服用で症状が改善することは稀ではありません。私自身、葛根湯が風邪に効くことは知っていましたが、たった1回で治るとは思ってもいませんでした。そして、1回の服用で症状が完全に消えた体験を始めてしたときは本当に驚きました。
葛根湯を飲むタイミングは、汗をかく前の次の症状が出たときです。
- 1. 首から上に、寝違えたような、重苦しいような何らかの違和感がある
- 2. 頭が重い
- 3. 肩やうなじが凝る
- 4. 寒気がしてゾクゾクする
- 5. 体のふしぶしが痛い
- 6. 手足が冷える
つまり、普段と違う症状が出たら、迷わず飲んでよいということです。もし、間違って飲んだとしても、大丈夫です。何も起こりませんから。ご心配な方は、予防として毎日1包くらいを飲むこともできます。
「漢方薬がウイルス性の風邪に効果を発揮するなんて知らなかった!」という方も多かったでしょう。生体防御機構を上手に利用して怖いウイルスを排除する漢方薬の力をうまく活用して、この辛い時期を一緒に乗り越えましょう。
市販されている葛根湯はたくさんありますが、私のお勧めは「味が良く香りが良い葛根湯」です。
(薬剤師)