ゴミ問題!冷え症の人もご用心~炎症と免疫の話~

今回は、「体の中のゴミ」が慢性的な炎症を引き起こすメカニズムと、それに関係する免疫のしくみについてわかりやすくご説明します。(関連記事:「認知症対策、脳のゴミ出しと睡眠⁈」
(関連記事:「認知症対策、脳のゴミ出しと睡眠⁈」https://www.shojusen.jp/post62/)
お掃除屋さん「食細胞」
体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体を排除するしくみが「免疫」です。中でも、病原体や不要になった細胞の死骸などを取り込んで分解する役目をもつ免疫細胞が「食細胞」です。その代表がマクロファージで、体の中のお掃除屋さんとして知られています。

病原体や細胞の死骸を取り込む食細胞(マクロファージ)。体内を常にパトロールしています。
体内の「ゴミ」とは?
体の中の「ゴミ」にはいくつかの種類があります。
たとえば:
- • 細胞の老廃物や死骸
- • ウイルスや細菌など外敵(PAMPs:病原体関連分子パターン)
- • 壊れた細胞や腫瘍細胞の死骸(DAMPs:ダメージ関連分子パターン)
この記事では、特に体に悪影響を及ぼす可能性のある後者2つを「危険ゴミ」と呼ぶことにします。
危険ゴミが出るとき
危険ゴミは、感染症や細胞や腫瘍細胞の死骸から出るだけではありません。虚血(血流が一時的に止まること)や、再び血液が流れ始める「再灌流(さいかんりゅう)」によっても発生することが知られています。また、冷えが続くことで血流が悪くなると、虚血と再灌流が繰り返されるので、同様に危険ゴミが発生する可能性があると指摘する研究もあります。ただし、冷えによる影響には個人差が大きく、すべての人に当てはまるとは限りません。
危険ゴミと普通ゴミの見分け方~免疫細胞の反応~
食細胞がゴミを取り込むと、それを分解して「かけら(ペプチド)」にし、自らの表面に提示します。このとき、
- • 通常の老廃物などを提示する場合:細胞の見た目はあまり変化しません。
- • 危険ゴミを提示する場合:免疫細胞の形が大きく変わります。
- • 通常の老廃物などを提示する場合:細胞の見た目はあまり変化しません。
特に「樹状細胞」という免疫細胞は、このゴミの提示を専門に行っています。危険ゴミを提示する際には、表面にたくさんの突起を出して活性化した状態になります(右下のイラスト)。これにより、「敵がいるぞ!」という情報が、より強力に免疫システム全体に伝えられます。

このように提示する情報に応じて食細胞の形態が変化します。そして、危険ゴミの情報は「獲得免疫」へ伝えられ、ウイルスや腫瘍などが退治されます。
炎症の始まりと広がり
私たちの実世界では、危険ゴミを放置したことで、それが勝手に燃えてしまうことはありません。しかし、体内で発生した危険ゴミは違います。危険ゴミを取り込んだ免疫細胞は、「サイトカイン」と呼ばれる物質を出して炎症を起こし、体の防御態勢を整えます。これは本来、体を守る正常な反応ですが、ゴミが処理されずに残ると、炎症が長引いて周囲の細胞にも被害を与えてしまいます。これがいわゆる「慢性炎症」です。
慢性炎症が続くと、自己免疫疾患やアレルギー、糖尿病、動脈硬化、がんなどの病気のリスクが高まることが知られています。
血流を良くして、炎症の悪循環を防ごう
炎症の更なる拡大を防ぐために重要なのが「血流」です。血流が良ければ、細胞の代謝がスムーズに進み、普通ゴミも危険ゴミも適切に運び出されます。逆に、血行が悪いとゴミがたまりやすく、炎症の引き金となる可能性があります。
また、冷えや疲労などが続くと、血流の低下とともに炎症反応が起きやすくなるとも考えられています。日々の体調管理や、体を温める生活習慣が、炎症予防につながるかもしれません。

血流が良い状態ではゴミは効率よく排出されるが、滞るとゴミが蓄積して炎症の原因に。
まとめ
私たちの体は、常に不要なものと戦いながらバランスを保っています。その中で、ゴミを早く処理し、炎症を抑える仕組みが働いています。血流を整え、体を冷やさないよう心がけることは、その自然なしくみをサポートするために大切なことといえそうです。
ゴミはいち早く片付けましょう。つまり、日頃から血流をよくしておきましょう。
※本記事は、科学的知見にもとづいて執筆していますが、一般的な健康情報としてご理解ください。体質や症状には個人差があるため、具体的な症状については医療機関での相談をおすすめします。
(薬剤師)